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Artist

ARSENIO RODRIGUEZ Y SU CONJUNTO

Title

LOS EXITOS DE ARSENIO RODRIGUEZ



Japanese Title ベスト・オブ・アルセニオ・ロドリゲス
Date 1963/1966
Label ANSONIA HGCD-1337(US) / ボンバ BOM3001(JP)
CD Release 1990
Rating ★★★★☆
Availability ◆◆◆◆


Review

 63年と66年にアンソニアからリリースされたLPの2オン1。国内では『エル・センティメント・デ・アルセニオ』『サブローソ・イ・カリエンテ』と同時期に発売されたため、それらにくらべてしまうと、やや地味な印象はあるが内容はよい。アルバムの前半だけでいうなら、個人的には『サブローソ…』より好き。

 63年のセッションは、トレス、ピアノ、ベース、ボンゴ、コンガ、3トランペットの典型的なコンフント・スタイルに一部ティンバーレスを加えたソン・モントゥーノ中心の、キューバのコクが凝縮されたすばらしい内容。ここでの最大の聴きものは、1曲目のキューバRCA時代に録音したソン・モントゥーノの名曲'EL RELOJ DE PASTORA'のリメイクだろう。キューバへの望郷の念が込められたかのような重くて深い歌と演奏は、胸がギュッと締めつけられるような狂おしさに満ちている。

 このセッションには、渡米まもないころ、ヴォーカルを担当していたカンディード・アントマッテイが4曲に参加。なかでもボレーロ'COMPRENDO QUE SUFRES'での男の哀愁を漂わせたかれの懐の深いテノールは鳥肌もの。また、『パロ・コンゴ』(東芝EMI TOCJ-1561)でも引用されていたスタンダード曲「キューバ美人」('LINDA CUBANA') をここでもとりあげ、アルセニオは原曲を無視してアンプリファイド・トレスで縦横無尽に弾きまくる。異論はあろうが、よく構成された音楽のなかに唐突に現れるザッパの混沌としたギター・ソロを思い出してしまった。

 後半の66年のセッションは、アルセニオと弟のキケを除いて、メンバーは総入れ替え。63年の編成に新たにテナー・サックスが加わることで、グッとアメリカナイズされたサウンドに変わった。ソン・モントゥーノ、グァグァンコーからパチャンガ、ブーガルーまで、ヴァラエティ豊富な内容。だが、ここでも音楽の底流を流れるのはアルセニオ特有のディープなサウンド。40年代にキューバのアルセニオ楽団のメンバーだったトランペッターのアルフレッド・“チョコラーテ”・アルメンテスとヴォーカルのマルセリーノ・ゲーラ、それにオルケスタ・カシーノ・デ・ラ・プラーヤ出身で、47年、ニューヨークでのチャノ・ポソとのセッションで共演したのが縁で、NY移住直後のアルセニオ楽団のキーマンとなったピアニストだったレネ・エルナンデスがメンバーに名をつらねているのは興味ぶかい。

 'PAPA UPA'は、正調ソン・モントゥーノ。アルセニオのトレス・ソロも絶好調。ラリー・ハーロウもカヴァーした'SUELTALA'は陽気なソン・モントゥーノ。アルセニオにしては平凡な作品だが、サルサにつうじるフレイヴァーがある。最後3曲あたりは来たるべきサルサの夜明けを告げているようなエキサイティングな演奏だ。

 やっぱり、アルセニオの本領は明るくアップ・テンポな曲ではなくて、ミディアム・テンポのソン・モントゥーノか、スローなボレーロにあることを再確認した次第。


(9.22.01)



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by Tatsushi Tsukahara